2025年 6月作品 暦日下町

2025年 6月作品 暦日下町

孝男  一幹  麻紗 篤樹  恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂 


◇道山 孝男

夏近し緑さらなる公園樹

世の中に三日遅れて更衣

幾たびも雨呼び寄せる七変化

老鶯の声に深まる湖の色

青蛙田より現れ田に消ゆる


◇萩庭 一幹

紫陽花の鞠埋め尽くす路地住ひ

法華経の碑慕ふ夏の蝶

山法師炭焼窯の在り処

露坐仏へ泰山木の花降臨

睡蓮の目覚め時なる鷺一声


◇渋谷 麻紗

水無月の細き水吐く竜の口

花街の名残りの花か立葵

古書街も官庁街も梅雨に入る

窓越しの蕎麦屋の実梅大きかり

梅雨寒や駆込み寺の離縁状


◇柳篤樹

また街の本屋閉店はしり梅雨

梅雨じめり低くなりたる土踏まず

梅落とす棹やらかにやわらかに

拘りも捨てておしまひ衣更

土用芽の茶畑戦ぐ山おろし


◇遠藤 恵美子

走り梅雨追分宿を抜けゆけり

新緑の落葉松通り仄暗し

こごみ売る駅舎無人販売所

夏来る海辺で開くランチ会

梅雨に入る二ヶ寺参りの日曜日


◇飯塚 佐恵子

明易しガザ侵攻の画面操り

蚕豆の鞘山盛りに剥きあがり

梅雨冷やピアノに映る昼灯

花あふち尼僧下りくる雨の磴

転ぶ子の泣くまでの間や麦の秋


◇松尾 龍之介

かくれん坊身を潜むれば黴匂ふ

かたばみの花の故郷喜望峰

花芭蕉井戸の周りの石畳

自らの重みにバラの俯ける

風美味し若葉が山に馴染む頃


◇世古 一穂

梅雨寒やくしゃみ一つの傘の内

光り出す仁王のまなこ梅雨の雷

梅雨晴れ間鼻よりかわく鬼瓦

神沼に木魂の鎮む杜若

梅雨寒や廊百閒の木目立つ



2025年5月 作品 暦日下町
孝男  一幹  麻紗 篤樹  恵美子 佐恵子 富美子 竜之介 一穂 


◇道山 孝男
青年の主張そのまま青嵐
遅れても威風堂々八重桜
人生の中の嬉しさ花疲れ
山里を染める夕焼け夏にいる
打ち返す波の気だるさ春の暮
◇萩庭 一幹
住み古るや路地の詰まりの瓜の花
青嵐海底トンネル潜り来て
山法師炭焼窯のそのままに
若き日へ会ひに戻りぬ青嵐
大寺や甕ひとつ置く蕗の海
◇渋谷 麻紗
観音へ登る回廊風薫る
鎌倉の釈迦牟尼佛へ青嵐
ニコライの鐘の響きも五月かな
心字池わがもの顔の残り鴨
学問所跡や実梅の当たり年
◇遠藤 恵美子
温泉の貼り紙けふは菖蒲湯と
夏夕べ田水にゆるる家の影
風鈴に風やはらかく寺の空
夏野ゆく今日は真白きスニーカー
青あらし社の大樹は動じない
◇飯塚 佐恵子
山笑ふ風のベンチでミニ句会
お目当てのカフェ満席街薄暑
一日の疲れをほぐす夕牡丹
天の師へ伝へたきこと桐の花
繋がれし山羊の一声青嵐
◇松尾 龍之介
馬術部の厩も北の窓開く
のどけしやラジオの時報尻上がり
燕来る屋根の平らな屋形船
花散るや半ば口開け左大臣
御手洗の歯朶豊かなり青嵐
◇世古 一穂
神沼の緑へ藤のふぶきけり
万緑の底ゆく同行二人かな
緑なす山の湖鎮もれり
分け入りて青葉の山や光満ち大欅翼休めし暑さかな
2025年4月 作品 暦日下町
孝男  一幹  麻紗 篤樹 純栄 
恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂 
◇道山 孝男
野は既にパッチワークの花筵
春深し風の詩を聴く散歩道
青春を甦さする春の風
遠足のおむすびはおふくろの味
春愁や生きることにも戸惑ひて
◇萩庭 一幹
縄文の野に遠足の手弁当
鳥雲に混沌の世を小さくして
路地伝ひ花の奥なる毘沙門堂
鬼平の架けし大橋花の雲
未来にも未来ありきか鳥曇り
◇渋谷 麻紗
旅先の雪にとまどふ四月入り
降り癖の花の雨なる西の京
遠足の子らに出会ひし飛鳥寺
苔の上に紅一点の落椿
一途なる花の命を傷みけり
◇柳篤樹
待花や鳥影薄き里の春
長瀞の渦に巻かるる花筏
一片を玻璃に名残りの花吹雪
生り年や萼の鳶色豊後梅散る
遠足の黄色の帽子手を上げて
◇遠藤 恵美子
寺で逢ふ笑顔まぶしき桜人
初音聞く村への道は工事中
お社で記念撮影花の昼
能管の一声春の能舞台
涅槃西風羽衣を舞ふ能舞台
◇飯塚 佐恵子
いつの間に昭和百年春の雪
春の雨膝に暦日終刊号
江ノ電の車窓に春の水平線
熊出たと防災無線青き踏む
遠足の弁当へ鳶急降下
◇安保 富美子
ごうごうと芽吹く銀杏や墓地の空
花辛夷こころの白さ問はれしか
初桜ざらつく髪をととのへて
彼岸の帰路夫の生地を歩きけり
三椏は鈍き日差しに黄をかえし
◇松尾 龍之介
椿落つ苔むす道の水源地
踏切のレールの隙間はこべ咲く
燕来る川浪荒き日なりけり
遠足のリュックの匂ひどれも同じ
春めくやカルピス色の走り雲
◇世古 一穂
春光をくるり巻き込む鉄の屑
うららかや飴屋の指に鳩うまれ
遠足の弁当にぎやか桜舞ふ
打ち寄せしハングル文字や春渚毘沙門へ極楽橋や青葉光
2025年3月 作品 暦日下町
孝男  一幹 盛人 麻紗 篤樹 純栄 恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
◇道山 孝男
鳥の声運ぶ窓際桜東風
流れたき方に流るる春の水
水温む予定ポツポツ入りをり
腰軽く動ける朝春兆す
道長の月となりたる春満月
◇萩庭 一幹
みくまりの律の生るる芹の沢
落椿遠流の島の嘆き文
日のかけら水面に残し鴨帰る
水温み艫綱ゆるむ船溜まり
風の階昇り詰めたる北帰鴨
◇渋谷 麻紗
日脚伸ぶ友と長居の喫茶店
新宿の不夜城に降る春の雪
人声に寄り来る鯉や水温む
図書館の窓辺の明かし花ミモザ
露天湯や春曙の熊野灘
◇柳篤樹
ポリ袋はためく梢春一番
諍いの後の黙やリラの花
菜の花や母の唄ひし声のする
盆梅の一枝蕾の二つ三つ
水温み堰に溢るる光かな
◇遠藤 恵美子
阿波富士のふもとの村の梅祭
客を待つ一輪挿しの椿かな
一輪の椿手折るを惜しみけり
梅林の小道を一人空清し
寺参り乙女椿の初々し
◇飯塚 佐恵子
心地よき列車の揺らぎ春の雲
放たれる刻へ全山杉花粉
山の日に群れゐてひとり節分草
下萌や山羊小屋空つぽのまんま
水温む鴨羽繕ふ船着場
◇安保 富美子
細胞のひとつひとつに春の風
鳴き砂のノスタルジアの春の海
春の川心の虚ろ満たしゆく
薔薇芽吹く砦のやうな棘に触る
残る茣蓙さくら隠しの雪となり
◇松尾 龍之介
春寒し先の削げたる塗りの箸
立雛の男雛大きく手を拡げ
向こうから視界を過る春の猫
白壁を縦に穢して春時雨
一点に春日を返す天文台
◇世古 一穂
研ぐ米の指先ほのか水温む
春の夜のグラスに指紋うつりけり
捨て石に腰を預けて梅日和
幼児語ひらひらふゆる蝶の昼
水温む鴨の反り身の芸達者

2025年 6月作品 暦日下町

孝男  一幹  麻紗 篤樹  恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂 


◇道山 孝男

夏近し緑さらなる公園樹

世の中に三日遅れて更衣

幾たびも雨呼び寄せる七変化

老鶯の声に深まる湖の色

青蛙田より現れ田に消ゆる


◇萩庭 一幹

紫陽花の鞠埋め尽くす路地住ひ

法華経の碑慕ふ夏の蝶

山法師炭焼窯の在り処

露坐仏へ泰山木の花降臨

睡蓮の目覚め時なる鷺一声


◇渋谷 麻紗

水無月の細き水吐く竜の口

花街の名残りの花か立葵

古書街も官庁街も梅雨に入る

窓越しの蕎麦屋の実梅大きかり

梅雨寒や駆込み寺の離縁状


◇柳篤樹

また街の本屋閉店はしり梅雨

梅雨じめり低くなりたる土踏まず

梅落とす棹やらかにやわらかに

拘りも捨てておしまひ衣更

土用芽の茶畑戦ぐ山おろし


◇遠藤 恵美子

走り梅雨追分宿を抜けゆけり

新緑の落葉松通り仄暗し

こごみ売る駅舎無人販売所

夏来る海辺で開くランチ会

梅雨に入る二ヶ寺参りの日曜日


◇飯塚 佐恵子

明易しガザ侵攻の画面操り

蚕豆の鞘山盛りに剥きあがり

梅雨冷やピアノに映る昼灯

花あふち尼僧下りくる雨の磴

転ぶ子の泣くまでの間や麦の秋


◇松尾 龍之介

かくれん坊身を潜むれば黴匂ふ

かたばみの花の故郷喜望峰

花芭蕉井戸の周りの石畳

自らの重みにバラの俯ける

風美味し若葉が山に馴染む頃


◇世古 一穂

梅雨寒やくしゃみ一つの傘の内

光り出す仁王のまなこ梅雨の雷

梅雨晴れ間鼻よりかわく鬼瓦

神沼に木魂の鎮む杜若

梅雨寒や廊百閒の木目立つ



2025年5月 作品 暦日下町
孝男  一幹  麻紗 篤樹  恵美子 佐恵子 富美子 竜之介 一穂 


◇道山 孝男
青年の主張そのまま青嵐
遅れても威風堂々八重桜
人生の中の嬉しさ花疲れ
山里を染める夕焼け夏にいる
打ち返す波の気だるさ春の暮
◇萩庭 一幹
住み古るや路地の詰まりの瓜の花
青嵐海底トンネル潜り来て
山法師炭焼窯のそのままに
若き日へ会ひに戻りぬ青嵐
大寺や甕ひとつ置く蕗の海
◇渋谷 麻紗
観音へ登る回廊風薫る
鎌倉の釈迦牟尼佛へ青嵐
ニコライの鐘の響きも五月かな
心字池わがもの顔の残り鴨
学問所跡や実梅の当たり年
◇遠藤 恵美子
温泉の貼り紙けふは菖蒲湯と
夏夕べ田水にゆるる家の影
風鈴に風やはらかく寺の空
夏野ゆく今日は真白きスニーカー
青あらし社の大樹は動じない
◇飯塚 佐恵子
山笑ふ風のベンチでミニ句会
お目当てのカフェ満席街薄暑
一日の疲れをほぐす夕牡丹
天の師へ伝へたきこと桐の花
繋がれし山羊の一声青嵐
◇松尾 龍之介
馬術部の厩も北の窓開く
のどけしやラジオの時報尻上がり
燕来る屋根の平らな屋形船
花散るや半ば口開け左大臣
御手洗の歯朶豊かなり青嵐
◇世古 一穂
神沼の緑へ藤のふぶきけり
万緑の底ゆく同行二人かな
緑なす山の湖鎮もれり
分け入りて青葉の山や光満ち大欅翼休めし暑さかな
2025年4月 作品 暦日下町
孝男  一幹  麻紗 篤樹 純栄 
恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂 
◇道山 孝男
野は既にパッチワークの花筵
春深し風の詩を聴く散歩道
青春を甦さする春の風
遠足のおむすびはおふくろの味
春愁や生きることにも戸惑ひて
◇萩庭 一幹
縄文の野に遠足の手弁当
鳥雲に混沌の世を小さくして
路地伝ひ花の奥なる毘沙門堂
鬼平の架けし大橋花の雲
未来にも未来ありきか鳥曇り
◇渋谷 麻紗
旅先の雪にとまどふ四月入り
降り癖の花の雨なる西の京
遠足の子らに出会ひし飛鳥寺
苔の上に紅一点の落椿
一途なる花の命を傷みけり
◇柳篤樹
待花や鳥影薄き里の春
長瀞の渦に巻かるる花筏
一片を玻璃に名残りの花吹雪
生り年や萼の鳶色豊後梅散る
遠足の黄色の帽子手を上げて
◇遠藤 恵美子
寺で逢ふ笑顔まぶしき桜人
初音聞く村への道は工事中
お社で記念撮影花の昼
能管の一声春の能舞台
涅槃西風羽衣を舞ふ能舞台
◇飯塚 佐恵子
いつの間に昭和百年春の雪
春の雨膝に暦日終刊号
江ノ電の車窓に春の水平線
熊出たと防災無線青き踏む
遠足の弁当へ鳶急降下
◇安保 富美子
ごうごうと芽吹く銀杏や墓地の空
花辛夷こころの白さ問はれしか
初桜ざらつく髪をととのへて
彼岸の帰路夫の生地を歩きけり
三椏は鈍き日差しに黄をかえし
◇松尾 龍之介
椿落つ苔むす道の水源地
踏切のレールの隙間はこべ咲く
燕来る川浪荒き日なりけり
遠足のリュックの匂ひどれも同じ
春めくやカルピス色の走り雲
◇世古 一穂
春光をくるり巻き込む鉄の屑
うららかや飴屋の指に鳩うまれ
遠足の弁当にぎやか桜舞ふ
打ち寄せしハングル文字や春渚毘沙門へ極楽橋や青葉光
2025年3月 作品 暦日下町
孝男  一幹 盛人 麻紗 篤樹 純栄 恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
◇道山 孝男
鳥の声運ぶ窓際桜東風
流れたき方に流るる春の水
水温む予定ポツポツ入りをり
腰軽く動ける朝春兆す
道長の月となりたる春満月
◇萩庭 一幹
みくまりの律の生るる芹の沢
落椿遠流の島の嘆き文
日のかけら水面に残し鴨帰る
水温み艫綱ゆるむ船溜まり
風の階昇り詰めたる北帰鴨
◇渋谷 麻紗
日脚伸ぶ友と長居の喫茶店
新宿の不夜城に降る春の雪
人声に寄り来る鯉や水温む
図書館の窓辺の明かし花ミモザ
露天湯や春曙の熊野灘
◇柳篤樹
ポリ袋はためく梢春一番
諍いの後の黙やリラの花
菜の花や母の唄ひし声のする
盆梅の一枝蕾の二つ三つ
水温み堰に溢るる光かな
◇遠藤 恵美子
阿波富士のふもとの村の梅祭
客を待つ一輪挿しの椿かな
一輪の椿手折るを惜しみけり
梅林の小道を一人空清し
寺参り乙女椿の初々し
◇飯塚 佐恵子
心地よき列車の揺らぎ春の雲
放たれる刻へ全山杉花粉
山の日に群れゐてひとり節分草
下萌や山羊小屋空つぽのまんま
水温む鴨羽繕ふ船着場
◇安保 富美子
細胞のひとつひとつに春の風
鳴き砂のノスタルジアの春の海
春の川心の虚ろ満たしゆく
薔薇芽吹く砦のやうな棘に触る
残る茣蓙さくら隠しの雪となり
◇松尾 龍之介
春寒し先の削げたる塗りの箸
立雛の男雛大きく手を拡げ
向こうから視界を過る春の猫
白壁を縦に穢して春時雨
一点に春日を返す天文台
◇世古 一穂
研ぐ米の指先ほのか水温む
春の夜のグラスに指紋うつりけり
捨て石に腰を預けて梅日和
幼児語ひらひらふゆる蝶の昼
水温む鴨の反り身の芸達者

小田原城


通信句会 なかま

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