2025年 6月作品 暦日下町
孝男 一幹 麻紗 篤樹 恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
◇道山 孝男
やる時は脇目も振らず蝉時雨
青空を広げて今日の山開き
可も不可もなき一日や夕端居
七月や風に置きたる旅帽子
汗ばかり掻きし人生握り飯
◇萩庭 一幹
蝉時雨乙女の祈り長かりき
夏草や石垣緩ぶ見附跡
梅雨底に埴輪二体や都市公園
煩悩の数の磴下り夏祓
泡沫は川の呟き夏至昏るる
◇渋谷 麻紗
夕凪や故郷の浜に貝拾ふ
蝉しぐれ高原の駅降り立てば
荒梅雨に降り込められし峡の村
夏空へみなとみらいのノッポビル
夾竹桃真鯉のおよぐ神田川
◇柳篤樹
ひとつづつ忘れ行く過去まだら梅雨
草いきれ低山趣味と呼ばば呼べ
夏痩せもせでのうのうと馬齢かな
月見草薄紅色に閉ぢて朝
夕凪や六甲颪轟きぬ
◇遠藤 恵美子
雲の峰うだつの町の虫籠窓
睡蓮の青を咲かせし和菓子店
菓子の銘は夏越し茶席にひとりゐて
遠き日の母の記憶や虹二重
深煎りの珈琲で待つ蝉しぐれ
◇飯塚 佐恵子
月見草殖やして友の鄙住まひ
掌の温み恋しき蛍かな
菖蒲園ひたと花殻摘む漢
一本の捩花嬉し我が芝生
飛び石は木洩れ日模様蟬時雨
◇松尾 龍之介
しょつ引いて鳴らす汽笛や麦の秋
梅雨深し史跡出島の屋根瓦
懸崖に枝をひろげて菓子合歓の花
破れ傘西より変はる空模様
箸入るる一年振りの冷奴
◇世古 一穂
尾鰭つく人の噂や百日紅
それぞれの水輪に力む水すまし
神主の声裏返る磯開き
捨て石に腰を預けて蟬時雨
城址に碑ひとつあり蝉時雨
2025年 6月作品 暦日下町
孝男 一幹 麻紗 篤樹 恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
◇道山 孝男
夏近し緑さらなる公園樹
世の中に三日遅れて更衣
幾たびも雨呼び寄せる七変化
老鶯の声に深まる湖の色
青蛙田より現れ田に消ゆる
◇萩庭 一幹
紫陽花の鞠埋め尽くす路地住ひ
法華経の碑慕ふ夏の蝶
山法師炭焼窯の在り処
露坐仏へ泰山木の花降臨
睡蓮の目覚め時なる鷺一声
◇渋谷 麻紗
水無月の細き水吐く竜の口
花街の名残りの花か立葵
古書街も官庁街も梅雨に入る
窓越しの蕎麦屋の実梅大きかり
梅雨寒や駆込み寺の離縁状
◇柳篤樹
また街の本屋閉店はしり梅雨
梅雨じめり低くなりたる土踏まず
梅落とす棹やらかにやわらかに
拘りも捨てておしまひ衣更
土用芽の茶畑戦ぐ山おろし
◇遠藤 恵美子
走り梅雨追分宿を抜けゆけり
新緑の落葉松通り仄暗し
こごみ売る駅舎無人販売所
夏来る海辺で開くランチ会
梅雨に入る二ヶ寺参りの日曜日
◇飯塚 佐恵子
明易しガザ侵攻の画面操り
蚕豆の鞘山盛りに剥きあがり
梅雨冷やピアノに映る昼灯
花あふち尼僧下りくる雨の磴
転ぶ子の泣くまでの間や麦の秋
◇松尾 龍之介
かくれん坊身を潜むれば黴匂ふ
かたばみの花の故郷喜望峰
花芭蕉井戸の周りの石畳
自らの重みにバラの俯ける
風美味し若葉が山に馴染む頃
◇世古 一穂
梅雨寒やくしゃみ一つの傘の内
光り出す仁王のまなこ梅雨の雷
梅雨晴れ間鼻よりかわく鬼瓦
神沼に木魂の鎮む杜若
梅雨寒や廊百閒の木目立つ
2025年5月 作品 暦日下町
孝男 一幹 麻紗 篤樹 恵美子 佐恵子 富美子 竜之介 一穂
◇道山 孝男
青年の主張そのまま青嵐
遅れても威風堂々八重桜
人生の中の嬉しさ花疲れ
山里を染める夕焼け夏にいる
打ち返す波の気だるさ春の暮
◇萩庭 一幹
住み古るや路地の詰まりの瓜の花
青嵐海底トンネル潜り来て
山法師炭焼窯のそのままに
若き日へ会ひに戻りぬ青嵐
大寺や甕ひとつ置く蕗の海
◇渋谷 麻紗
観音へ登る回廊風薫る
鎌倉の釈迦牟尼佛へ青嵐
ニコライの鐘の響きも五月かな
心字池わがもの顔の残り鴨
学問所跡や実梅の当たり年
◇遠藤 恵美子
温泉の貼り紙けふは菖蒲湯と
夏夕べ田水にゆるる家の影
風鈴に風やはらかく寺の空
夏野ゆく今日は真白きスニーカー
青あらし社の大樹は動じない
◇飯塚 佐恵子
山笑ふ風のベンチでミニ句会
お目当てのカフェ満席街薄暑
一日の疲れをほぐす夕牡丹
天の師へ伝へたきこと桐の花
繋がれし山羊の一声青嵐
◇松尾 龍之介
馬術部の厩も北の窓開く
のどけしやラジオの時報尻上がり
燕来る屋根の平らな屋形船
花散るや半ば口開け左大臣
御手洗の歯朶豊かなり青嵐
◇世古 一穂
神沼の緑へ藤のふぶきけり
万緑の底ゆく同行二人かな
緑なす山の湖鎮もれり
分け入りて青葉の山や光満ち大欅翼休めし暑さかな
2025年4月 作品 暦日下町
孝男 一幹 麻紗 篤樹 純栄
恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
◇道山 孝男
野は既にパッチワークの花筵
春深し風の詩を聴く散歩道
青春を甦さする春の風
遠足のおむすびはおふくろの味
春愁や生きることにも戸惑ひて
◇萩庭 一幹
縄文の野に遠足の手弁当
鳥雲に混沌の世を小さくして
路地伝ひ花の奥なる毘沙門堂
鬼平の架けし大橋花の雲
未来にも未来ありきか鳥曇り
◇渋谷 麻紗
旅先の雪にとまどふ四月入り
降り癖の花の雨なる西の京
遠足の子らに出会ひし飛鳥寺
苔の上に紅一点の落椿
一途なる花の命を傷みけり
◇柳篤樹
待花や鳥影薄き里の春
長瀞の渦に巻かるる花筏
一片を玻璃に名残りの花吹雪
生り年や萼の鳶色豊後梅散る
遠足の黄色の帽子手を上げて
◇遠藤 恵美子
寺で逢ふ笑顔まぶしき桜人
初音聞く村への道は工事中
お社で記念撮影花の昼
能管の一声春の能舞台
涅槃西風羽衣を舞ふ能舞台
◇飯塚 佐恵子
いつの間に昭和百年春の雪
春の雨膝に暦日終刊号
江ノ電の車窓に春の水平線
熊出たと防災無線青き踏む
遠足の弁当へ鳶急降下
◇安保 富美子
ごうごうと芽吹く銀杏や墓地の空
花辛夷こころの白さ問はれしか
初桜ざらつく髪をととのへて
彼岸の帰路夫の生地を歩きけり
三椏は鈍き日差しに黄をかえし
◇松尾 龍之介
椿落つ苔むす道の水源地
踏切のレールの隙間はこべ咲く
燕来る川浪荒き日なりけり
遠足のリュックの匂ひどれも同じ
春めくやカルピス色の走り雲
◇世古 一穂
春光をくるり巻き込む鉄の屑
うららかや飴屋の指に鳩うまれ
遠足の弁当にぎやか桜舞ふ
打ち寄せしハングル文字や春渚毘沙門へ極楽橋や青葉光
2025年3月 作品 暦日下町
孝男 一幹 盛人 麻紗 篤樹 純栄 恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
◇道山 孝男
鳥の声運ぶ窓際桜東風
流れたき方に流るる春の水
水温む予定ポツポツ入りをり
腰軽く動ける朝春兆す
道長の月となりたる春満月
◇萩庭 一幹
みくまりの律の生るる芹の沢
落椿遠流の島の嘆き文
日のかけら水面に残し鴨帰る
水温み艫綱ゆるむ船溜まり
風の階昇り詰めたる北帰鴨
◇渋谷 麻紗
日脚伸ぶ友と長居の喫茶店
新宿の不夜城に降る春の雪
人声に寄り来る鯉や水温む
図書館の窓辺の明かし花ミモザ
露天湯や春曙の熊野灘
◇柳篤樹
ポリ袋はためく梢春一番
諍いの後の黙やリラの花
菜の花や母の唄ひし声のする
盆梅の一枝蕾の二つ三つ
水温み堰に溢るる光かな
◇遠藤 恵美子
阿波富士のふもとの村の梅祭
客を待つ一輪挿しの椿かな
一輪の椿手折るを惜しみけり
梅林の小道を一人空清し
寺参り乙女椿の初々し
◇飯塚 佐恵子
心地よき列車の揺らぎ春の雲
放たれる刻へ全山杉花粉
山の日に群れゐてひとり節分草
下萌や山羊小屋空つぽのまんま
水温む鴨羽繕ふ船着場
◇安保 富美子
細胞のひとつひとつに春の風
鳴き砂のノスタルジアの春の海
春の川心の虚ろ満たしゆく
薔薇芽吹く砦のやうな棘に触る
残る茣蓙さくら隠しの雪となり
◇松尾 龍之介
春寒し先の削げたる塗りの箸
立雛の男雛大きく手を拡げ
向こうから視界を過る春の猫
白壁を縦に穢して春時雨
一点に春日を返す天文台
◇世古 一穂
研ぐ米の指先ほのか水温む
春の夜のグラスに指紋うつりけり
捨て石に腰を預けて梅日和
幼児語ひらひらふゆる蝶の昼
水温む鴨の反り身の芸達者
縦書き表示のご要望ですね。
Markdown形式では直接的な縦書き表示はサポートされていないため、HTMLとCSSを使用して縦書きを実現するコードをご提供します。これにより、ブラウザで開いた際に、日本の伝統的な縦書きのレイアウトで俳句を閲覧できるようになります。
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孝男 一幹 麻紗 篤樹 恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
◇道山 孝男
夏近し緑さらなる公園樹
世の中に三日遅れて更衣
幾たびも雨呼び寄せる七変化
老鶯の声に深まる湖の色
青蛙田より現れ田に消ゆる
◇萩庭 一幹
紫陽花の鞠埋め尽くす路地住ひ
法華経の碑慕ふ夏の蝶
山法師炭焼窯の在り処
露坐仏へ泰山木の花降臨
睡蓮の目覚め時なる鷺一声
◇渋谷 麻紗
水無月の細き水吐く竜の口
花街の名残りの花か立葵
古書街も官庁街も梅雨に入る
窓越しの蕎麦屋の実梅大きかり
梅雨寒や駆込み寺の離縁状
◇柳篤樹
また街の本屋閉店はしり梅雨
梅雨じめり低くなりたる土踏まず
梅落とす棹やらかにやわらかに
拘りも捨てておしまひ衣更
土用芽の茶畑戦ぐ山おろし
◇遠藤 恵美子
走り梅雨追分宿を抜けゆけり
新緑の落葉松通り仄暗し
こごみ売る駅舎無人販売所
夏来る海辺で開くランチ会
梅雨に入る二ヶ寺参りの日曜日
◇飯塚 佐恵子
明易しガザ侵攻の画面操り
蚕豆の鞘山盛りに剥きあがり
梅雨冷やピアノに映る昼灯
花あふち尼僧下りくる雨の磴
転ぶ子の泣くまでの間や麦の秋
◇松尾 龍之介
かくれん坊身を潜むれば黴匂ふ
かたばみの花の故郷喜望峰
花芭蕉井戸の周りの石畳
自らの重みにバラの俯ける
風美味し若葉が山に馴染む頃
◇世古 一穂
梅雨寒やくしゃみ一つの傘の内
光り出す仁王のまなこ梅雨の雷
梅雨晴れ間鼻よりかわく鬼瓦
神沼に木魂の鎮む杜若
梅雨寒や廊百閒の木目立つ
孝男 一幹 麻紗 篤樹 恵美子 佐恵子 富美子 竜之介 一穂
遅れても威風堂々八重桜
人生の中の嬉しさ花疲れ
山里を染める夕焼け夏にいる
打ち返す波の気だるさ春の暮
住み古るや路地の詰まりの瓜の花
青嵐海底トンネル潜り来て
山法師炭焼窯のそのままに
若き日へ会ひに戻りぬ青嵐
大寺や甕ひとつ置く蕗の海
観音へ登る回廊風薫る
鎌倉の釈迦牟尼佛へ青嵐
ニコライの鐘の響きも五月かな
心字池わがもの顔の残り鴨
学問所跡や実梅の当たり年
温泉の貼り紙けふは菖蒲湯と
夏夕べ田水にゆるる家の影
風鈴に風やはらかく寺の空
夏野ゆく今日は真白きスニーカー
青あらし社の大樹は動じない
山笑ふ風のベンチでミニ句会
お目当てのカフェ満席街薄暑
一日の疲れをほぐす夕牡丹
天の師へ伝へたきこと桐の花
繋がれし山羊の一声青嵐
馬術部の厩も北の窓開く
のどけしやラジオの時報尻上がり
燕来る屋根の平らな屋形船
花散るや半ば口開け左大臣
御手洗の歯朶豊かなり青嵐
神沼の緑へ藤のふぶきけり
万緑の底ゆく同行二人かな
緑なす山の湖鎮もれり
分け入りて青葉の山や光満ち大欅翼休めし暑さかな
孝男 一幹 麻紗 篤樹 純栄
恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
野は既にパッチワークの花筵
春深し風の詩を聴く散歩道
青春を甦さする春の風
遠足のおむすびはおふくろの味
春愁や生きることにも戸惑ひて
縄文の野に遠足の手弁当
鳥雲に混沌の世を小さくして
路地伝ひ花の奥なる毘沙門堂
鬼平の架けし大橋花の雲
未来にも未来ありきか鳥曇り
旅先の雪にとまどふ四月入り
降り癖の花の雨なる西の京
遠足の子らに出会ひし飛鳥寺
苔の上に紅一点の落椿
一途なる花の命を傷みけり
待花や鳥影薄き里の春
長瀞の渦に巻かるる花筏
一片を玻璃に名残りの花吹雪
生り年や萼の鳶色豊後梅散る
遠足の黄色の帽子手を上げて
寺で逢ふ笑顔まぶしき桜人
初音聞く村への道は工事中
お社で記念撮影花の昼
能管の一声春の能舞台
涅槃西風羽衣を舞ふ能舞台
いつの間に昭和百年春の雪
春の雨膝に暦日終刊号
江ノ電の車窓に春の水平線
熊出たと防災無線青き踏む
遠足の弁当へ鳶急降下
ごうごうと芽吹く銀杏や墓地の空
花辛夷こころの白さ問はれしか
初桜ざらつく髪をととのへて
彼岸の帰路夫の生地を歩きけり
三椏は鈍き日差しに黄をかえし
椿落つ苔むす道の水源地
踏切のレールの隙間はこべ咲く
燕来る川浪荒き日なりけり
遠足のリュックの匂ひどれも同じ
春めくやカルピス色の走り雲
春光をくるり巻き込む鉄の屑
うららかや飴屋の指に鳩うまれ
遠足の弁当にぎやか桜舞ふ
打ち寄せしハングル文字や春渚毘沙門へ極楽橋や青葉光
孝男 一幹 盛人 麻紗 篤樹 純栄 恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
鳥の声運ぶ窓際桜東風
流れたき方に流るる春の水
水温む予定ポツポツ入りをり
腰軽く動ける朝春兆す
道長の月となりたる春満月
みくまりの律の生るる芹の沢
落椿遠流の島の嘆き文
日のかけら水面に残し鴨帰る
水温み艫綱ゆるむ船溜まり
風の階昇り詰めたる北帰鴨
日脚伸ぶ友と長居の喫茶店
新宿の不夜城に降る春の雪
人声に寄り来る鯉や水温む
図書館の窓辺の明かし花ミモザ
露天湯や春曙の熊野灘
ポリ袋はためく梢春一番
諍いの後の黙やリラの花
菜の花や母の唄ひし声のする
盆梅の一枝蕾の二つ三つ
水温み堰に溢るる光かな
阿波富士のふもとの村の梅祭
客を待つ一輪挿しの椿かな
一輪の椿手折るを惜しみけり
梅林の小道を一人空清し
寺参り乙女椿の初々し
心地よき列車の揺らぎ春の雲
放たれる刻へ全山杉花粉
山の日に群れゐてひとり節分草
下萌や山羊小屋空つぽのまんま
水温む鴨羽繕ふ船着場
細胞のひとつひとつに春の風
鳴き砂のノスタルジアの春の海
春の川心の虚ろ満たしゆく
薔薇芽吹く砦のやうな棘に触る
残る茣蓙さくら隠しの雪となり
春寒し先の削げたる塗りの箸
立雛の男雛大きく手を拡げ
向こうから視界を過る春の猫
白壁を縦に穢して春時雨
一点に春日を返す天文台
研ぐ米の指先ほのか水温む
春の夜のグラスに指紋うつりけり
捨て石に腰を預けて梅日和
幼児語ひらひらふゆる蝶の昼
水温む鴨の反り身の芸達者
2025年 6月作品 暦日下町
孝男 一幹 麻紗 篤樹 恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
◇道山 孝男
夏近し緑さらなる公園樹
世の中に三日遅れて更衣
幾たびも雨呼び寄せる七変化
老鶯の声に深まる湖の色
青蛙田より現れ田に消ゆる
◇萩庭 一幹
紫陽花の鞠埋め尽くす路地住ひ
法華経の碑慕ふ夏の蝶
山法師炭焼窯の在り処
露坐仏へ泰山木の花降臨
睡蓮の目覚め時なる鷺一声
◇渋谷 麻紗
水無月の細き水吐く竜の口
花街の名残りの花か立葵
古書街も官庁街も梅雨に入る
窓越しの蕎麦屋の実梅大きかり
梅雨寒や駆込み寺の離縁状
◇柳篤樹
また街の本屋閉店はしり梅雨
梅雨じめり低くなりたる土踏まず
梅落とす棹やらかにやわらかに
拘りも捨てておしまひ衣更
土用芽の茶畑戦ぐ山おろし
◇遠藤 恵美子
走り梅雨追分宿を抜けゆけり
新緑の落葉松通り仄暗し
こごみ売る駅舎無人販売所
夏来る海辺で開くランチ会
梅雨に入る二ヶ寺参りの日曜日
◇飯塚 佐恵子
明易しガザ侵攻の画面操り
蚕豆の鞘山盛りに剥きあがり
梅雨冷やピアノに映る昼灯
花あふち尼僧下りくる雨の磴
転ぶ子の泣くまでの間や麦の秋
◇松尾 龍之介
かくれん坊身を潜むれば黴匂ふ
かたばみの花の故郷喜望峰
花芭蕉井戸の周りの石畳
自らの重みにバラの俯ける
風美味し若葉が山に馴染む頃
◇世古 一穂
梅雨寒やくしゃみ一つの傘の内
光り出す仁王のまなこ梅雨の雷
梅雨晴れ間鼻よりかわく鬼瓦
神沼に木魂の鎮む杜若
梅雨寒や廊百閒の木目立つ
孝男 一幹 麻紗 篤樹 恵美子 佐恵子 富美子 竜之介 一穂
遅れても威風堂々八重桜
人生の中の嬉しさ花疲れ
山里を染める夕焼け夏にいる
打ち返す波の気だるさ春の暮
住み古るや路地の詰まりの瓜の花
青嵐海底トンネル潜り来て
山法師炭焼窯のそのままに
若き日へ会ひに戻りぬ青嵐
大寺や甕ひとつ置く蕗の海
観音へ登る回廊風薫る
鎌倉の釈迦牟尼佛へ青嵐
ニコライの鐘の響きも五月かな
心字池わがもの顔の残り鴨
学問所跡や実梅の当たり年
温泉の貼り紙けふは菖蒲湯と
夏夕べ田水にゆるる家の影
風鈴に風やはらかく寺の空
夏野ゆく今日は真白きスニーカー
青あらし社の大樹は動じない
山笑ふ風のベンチでミニ句会
お目当てのカフェ満席街薄暑
一日の疲れをほぐす夕牡丹
天の師へ伝へたきこと桐の花
繋がれし山羊の一声青嵐
馬術部の厩も北の窓開く
のどけしやラジオの時報尻上がり
燕来る屋根の平らな屋形船
花散るや半ば口開け左大臣
御手洗の歯朶豊かなり青嵐
神沼の緑へ藤のふぶきけり
万緑の底ゆく同行二人かな
緑なす山の湖鎮もれり
分け入りて青葉の山や光満ち大欅翼休めし暑さかな
孝男 一幹 麻紗 篤樹 純栄
恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
野は既にパッチワークの花筵
春深し風の詩を聴く散歩道
青春を甦さする春の風
遠足のおむすびはおふくろの味
春愁や生きることにも戸惑ひて
縄文の野に遠足の手弁当
鳥雲に混沌の世を小さくして
路地伝ひ花の奥なる毘沙門堂
鬼平の架けし大橋花の雲
未来にも未来ありきか鳥曇り
旅先の雪にとまどふ四月入り
降り癖の花の雨なる西の京
遠足の子らに出会ひし飛鳥寺
苔の上に紅一点の落椿
一途なる花の命を傷みけり
待花や鳥影薄き里の春
長瀞の渦に巻かるる花筏
一片を玻璃に名残りの花吹雪
生り年や萼の鳶色豊後梅散る
遠足の黄色の帽子手を上げて
寺で逢ふ笑顔まぶしき桜人
初音聞く村への道は工事中
お社で記念撮影花の昼
能管の一声春の能舞台
涅槃西風羽衣を舞ふ能舞台
いつの間に昭和百年春の雪
春の雨膝に暦日終刊号
江ノ電の車窓に春の水平線
熊出たと防災無線青き踏む
遠足の弁当へ鳶急降下
ごうごうと芽吹く銀杏や墓地の空
花辛夷こころの白さ問はれしか
初桜ざらつく髪をととのへて
彼岸の帰路夫の生地を歩きけり
三椏は鈍き日差しに黄をかえし
椿落つ苔むす道の水源地
踏切のレールの隙間はこべ咲く
燕来る川浪荒き日なりけり
遠足のリュックの匂ひどれも同じ
春めくやカルピス色の走り雲
春光をくるり巻き込む鉄の屑
うららかや飴屋の指に鳩うまれ
遠足の弁当にぎやか桜舞ふ
打ち寄せしハングル文字や春渚毘沙門へ極楽橋や青葉光
孝男 一幹 盛人 麻紗 篤樹 純栄 恵美子 佐恵子 富美子 龍之介 一穂
鳥の声運ぶ窓際桜東風
流れたき方に流るる春の水
水温む予定ポツポツ入りをり
腰軽く動ける朝春兆す
道長の月となりたる春満月
みくまりの律の生るる芹の沢
落椿遠流の島の嘆き文
日のかけら水面に残し鴨帰る
水温み艫綱ゆるむ船溜まり
風の階昇り詰めたる北帰鴨
日脚伸ぶ友と長居の喫茶店
新宿の不夜城に降る春の雪
人声に寄り来る鯉や水温む
図書館の窓辺の明かし花ミモザ
露天湯や春曙の熊野灘
ポリ袋はためく梢春一番
諍いの後の黙やリラの花
菜の花や母の唄ひし声のする
盆梅の一枝蕾の二つ三つ
水温み堰に溢るる光かな
阿波富士のふもとの村の梅祭
客を待つ一輪挿しの椿かな
一輪の椿手折るを惜しみけり
梅林の小道を一人空清し
寺参り乙女椿の初々し
心地よき列車の揺らぎ春の雲
放たれる刻へ全山杉花粉
山の日に群れゐてひとり節分草
下萌や山羊小屋空つぽのまんま
水温む鴨羽繕ふ船着場
細胞のひとつひとつに春の風
鳴き砂のノスタルジアの春の海
春の川心の虚ろ満たしゆく
薔薇芽吹く砦のやうな棘に触る
残る茣蓙さくら隠しの雪となり
春寒し先の削げたる塗りの箸
立雛の男雛大きく手を拡げ
向こうから視界を過る春の猫
白壁を縦に穢して春時雨
一点に春日を返す天文台
研ぐ米の指先ほのか水温む
春の夜のグラスに指紋うつりけり
捨て石に腰を預けて梅日和
幼児語ひらひらふゆる蝶の昼
水温む鴨の反り身の芸達者
小田原城
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